先輩、お久しぶりです
「で?何が聞きたいんだ」
私の隣に座る村元さんと斜め前に座る松下さんを交互に見た。
「あ、えーと……」
二人はお互い気まずそうにチラチラと視線を交わしていたけれど、村元さんがおずおずと質問を投げかけた。
「お、お二人はどういう経緯で付き合ったんですか?」
「…………は?そんなことかよ。ったく、そんなん聞いてどーすんだよ」
答えてやると言いながらぶつくさ文句を言っている。
そう言いながら『大学時代のあれこれを経て社会人になり再会し、何度か会っているうちに付き合うことになった』ということを簡潔だが丁寧に説明していた。
また聞き直すのは恥ずかしいけれど、学生時代から私に惚れていたということも話してくれた。
文句は言っても嫌がらずに答えてくれているところは優しい。けれど私としてはやっぱり恥ずかしい……。
「へぇ、なんか運命感じちゃいますね」
隣に座る村元さんはワクワクしてきたのか、またひとつ前に乗りだして私と昂良先輩をキラキラした目で見てきた。
「どこがだ」
「だって、学生時代のすれ違いを経験して、今度は同じ会社で偶然出会ってまた結ばれるって、ドラマみたいじゃないですか!それを運命と言わずしてなんて言うんですか」
う、運命……。
大げさだなぁと思いつつ、その言葉を頭の中で反芻した。
それなら同じ会社で働いていたことも、たまたま飲み会で再会したことも、そして実はお互い当時から惹かれあっていたと知れたことも、運命なのか。
もしかしたら過去は過去としてきっぱりと気持ちが完結していたら、きっと今こうやって付き合っていることはなかったはずで。
そう思えば運命と言えるかもしれない。
けれど、もしそうだとしても私は藤井昂良という人と出会えたことをただの運命や偶然だけで終わらせたくない!と強く願ってしまう。