先輩、お久しぶりです
予想もしない言葉を次から次へと言われ、このままテーブルに突っ伏して悶えてしまいたいのを必死で堪えるため、両手で顔を覆い隠した。
嘘でしょウソでしょーーっ!
本当にプロポーズをしようと思ってくれてるのか分からないけれど、もし本気ならこんなに嬉しいことはない。
いや、そんな訳ない……か!?
的場さんの言うとおり付き合ってまだそんなに経ってないのに。
いや……えぇーーっ!?
などと、いつもクールだなんだと言われてる人が隣で分かりやすく照れてる以上に私がテンパってしまった。
もう無理……恥ずか死ぬ。
少しして薄っすら目を開けて見ると、みんなニヤニヤが止まらず揶揄いたくてうずうずしていそうな表情をしている。
「それにしても以前の藤井からは考えられないわね」
松下さんが笑いを堪えながら口を開いた。
「どういうことだよ」
「前なんて結婚なんて考えられないって感じで、なんなら付き合うのも面倒そうだったじゃない。なのに今じゃ若宮さんの後つけ回すとか、どれだけベタ惚れなのよ」
「悪いか。それだけ大事なんだよ」
「学生時代から拗らせてたって言うだけあって、独占欲強いのね。はいはい、ごちそうさま〜」
も、もうこれ以上はキャパオーバーしそう……。
結局ただの惚気話に終始し、忙しないサラリーマンたちがお昼休憩にお蕎麦屋さんで話す内容ではなかったのは確か。
そのあとは村元さんも松下さんも温かく応援してくれ「招待状待ってるからね」とまで言われてしまった。
なのに的場さんは「俺も次の交流会のとき浮気相手探そ」とボソリと呟いたため、全員がそれを聞き逃さなかった。
「え?彼女いんの!?」
「俺は浮気相手探すために参加したわけじゃないからな!って、お前クズか!」
「サイッテー!」
などと非難されていて、始めに先輩が的場さんはやめておけと言っていた理由がここにきてやっと分かったのだった……。