先輩、お久しぶりです
エピローグ
ゴーン、ゴーンと鐘の音が響き渡る教会内。
二人の前に立つ牧師が誓いの言葉を述べる。
「病める時も、健やかなる時も…………真心を尽くすことを誓いますか」
「はい」
「新婦……は病める時も、健やかなる時もーー」
目の前には、天井まで届くほどの大きな窓にステンドグラスが飾られ、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
頭上には大ぶりなアンティークのシャンデリアが煌めき、クラシカルな大聖堂をより荘厳で神聖な雰囲気へと演出している。
年明けに挙式すると言っていた聡太だが、優子さんの妊娠が判明したため急遽日にちを伸ばし、一年後の桜の咲く春の今日行われた。
聡太も優子さんもとっても幸せそうで、見ている私も涙が出るほど感動してしまった。
これを美香が見たらまた笑われそうだけど、大切な友達だからこそ感動も大きくなるというもの。
だだ、フラワーシャワーで泣きながら花びらを撒いたことは、美香には言わないでおこう……。
チャペルでの幸せそうな挙式に出席させてもらったあとは、披露宴でかつてのバイト仲間たちとテーブルを囲み久しぶりに再会した喜びを静かに分かち合った。
二次会が行われた会場ではその友人たちと談笑しつつ、ちょこちょこと聡太夫妻と写真を撮り余興のビンゴ大会で盛り上がっていた。
相変わらずノリ良く打ち解けたバイト仲間たちからは、聡太と付き合っていたはずの私が二次会にまで呼ばれているのがなんとも可哀想に思えたのか、意味もなくやたら励まされた。
「ごめんな、俺てっきり聡太とチハが結婚するもんだと思ってたから、ちょっと複雑な気分になっちゃってさ」
「あはは、気にしてないよ」
「そうは言っても、お前らほんと仲良かっただろ。だから聡太が別の人と結婚するって聞いた時スッゲー驚いたんだよ。ウソだろ!ちょ、おい待てよ!ってさ」
「あははは!やめてよ高木、そのモノマネもう古いからっ!」
「あんたほんと成長してないよね」
「うるせー、アヤに言われたかねぇよ」
バイト時代聡太と付き合っていたのを知ってる友人たちが一番複雑な心境だと思うけど、そんなことはまったく気にならない私は、相変わらず学生時代のノリでみんなと話すのが楽しくてずっと笑っていた。
『えー、では次の番号です。85番!』
爆笑している私は手元にあるカードを適当に見ながら、司会者が読み上げた番号を見つけたため何の気無しにぺりっと穴を開けた。
「あーほんと、お腹痛いからもう笑わせないでよ」
「あ!ちょっ、チハ!当たったじゃん!」
「え?」
冗談を言って笑い合っていても、真剣に景品を当てたいと目論む友人が私のカードをすかさず確認して声を上げた。