先輩、お久しぶりです
「……どうして藤井さんがいるんですか」
待ち合わせのロビーに行くと、なぜか的場さんの隣に当然のように昂良先輩が立っていた。
「ごめんね、つい嬉しくてコイツに喋ったら俺もついていくって言われちゃって」
「新しい店は俺も行ったことないからな」
当たり前のように言うその態度に、目を細めて睨んでしまう。
的場さんとどうこうはないけど、昂良先輩が来るのはいただけない。断じて!
むむむ……。
「……だったら仕方ないですね。3人で行きましょう」
「わがまま言ってごめんね、次は二人で行こうね」
「そうですね」
あ、やばい。ノリ気で返事してしまった。
色々と釈然としないまま、的場さんについて歩いていたが、チラッと横を見上げれば、昂良先輩の眉間に皺が寄っている。
いや、そうしたいのは私の方ですけど!
新しいお店というのは会社から5分ほど歩いて、裏道に入った細い路地にある内装も開店して間もない、まだ木の香りが新鮮な和食料理屋さんだった。
ビジネス街でランチの時間だというのに、知っている人もまだ少ないのか人もまばらで、席にも余裕で座れた。
そして注文してからそれほど時間もかからず出てきた料理は、お昼のコースなのに豪華な内容で目を見張った。
「わぁ、すごい!ランチでこのクオリティはなかなかないですね!」
「でしょ。まだあまり知られてないからお店もすんなり入れたけど、口コミ書かれたらもう予約しないと来れなくなると思うよ」
「ですね。今日、的場さんにお誘いいただいて良かったです。ありがとうございます」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
こんなに見た目も良くて味も美味しいお店に連れてきてくれたのに、少しでも面倒臭いと思ってしまったのが申し訳なくなる。
優しく話しかけてくれる的場さんに多少なりとも心が開いてきたおかげで、気分良くお喋りしながら食事をしていたのに、一人不機嫌な昂良先輩。