先輩、お久しぶりです
「はい。そろそろ呼ばれそうだったんで」
「さすがです。ちょうど今から次のお店に移動するところだったんですよ。藤井さんも一緒にいかがですか?」
「いえ、俺は千春つれて帰ります」
「そうですね、その方がいいかも。やっぱ俺も優と帰ろうかな」
そう言うと、控えめなカラードレスに身を包んだ優子さんが慌てて手を振った。
「ううん、私は芽衣子が待ってるから聡くんはみんなと行ってきていいよっ」
「いや、やっぱ心配だし」
「私は初めから二次会までっていう約束だったし、こんな日だから聡くんは楽しんできていいよ」
とそんなやりとりしているのをみんな目をぱちくりさせながら聞いていた。
言っても二人にとっては今日が本当の初夜。
子供も無事産まれたけれど、飲み歩くより一緒に家族水入らずでいてあげる方がいいのにと思ってしまうけれど、そこは夫婦の問題……。
とそんなことを思っていると、たーくんが私の肩を引き寄せて挨拶をした。
「では、俺たちはここで失礼します」
「あ、みんなごめんね、先に帰るね。また集まろうね」
たーくんは少しだけぺこりと頭を下げ、私はみんなに手を振って会場をあとにした。
ポカンとしたまま友人たちは固まっていたが、しばらくすると「ええぇーーっ!」という友人たちの雄叫びが外まで響いていたのは私の知るところではなかった。
「今日はどうだった?」
「うん、とっても素敵だったよ。本当に幸せそうだった」
「そっか、良かったな。俺たちの時も幸せだったけどな」
「ふふ、そうだね」
私たちは聡太よりも少し早く、神社で神前式を挙げていた。
もちろん美香と陵介先輩も招待したけれど、職場関係のこともありほぼ身内だけで式を挙げたのだ。
そんな挙式をした日は晴天に恵まれた。
白無垢に紋付き袴姿で神殿へ向かうとき、境内を一歩一歩玉砂利を踏みしめながら歩いていると、とうとう先輩のお嫁さんになるのかと感慨深くなり感動で涙が溢れそうになった。
それでも式が始まる前だからとぐっと我慢をし、三三九度が行われ指輪の交換をした時にはついに涙腺が決壊した。
泣きながら彼の顔を見ると幸せな気持ちが込み上げ、視線を合わせ見つめ合って微笑んだ幸福感をつい昨日のことのように覚えている。
そんな自分たちの挙式を終えたあとの、聡太の結婚式。教会での挙式もまた感動的だった。
まだ行けていない新婚旅行は、お互いの仕事の都合を考慮して来月、ヨーロッパに行く予定だ。
もう毎日ワクワクして楽しみで仕方がない。