先輩、お久しぶりです
食事も終わり、お会計も事前に済ませてそろそろ席を立とうとしたところで、的場さんのスマホが突然鳴った。
急いで出た話しぶりから、相手はどうやら取引先らしく慌てた様子。
「悪い藤井、天羽リゾートから連絡入ってすぐに行かなきゃいけなくなったわ。悪いけど先行くな」
「あぁ、了解。難しいとこだから早く行った方がいいぞ」
「そうする。千春ちゃんごめんね、今日は先に帰るけどまた今度ご飯行こう」
「あ、はい。ありがとうございました。気をつけて行ってきてください」
的場さんはニコッと笑うと急いでお店を出て行ってしまった。
残された私は気まずく先輩と二人きり。
「私たちも行きましょうか」
「あいつ、馴れ馴れしいな」
千春ちゃんね……。
それは同感だけど、そこじゃない。
「それより、勝手なことばかり言うのやめてもらえませんか?」
「何のこと」
「彼氏いるとかなんとか」
蒸し返したくはないけど、知りもしないで勝手なこと言われるのは余計腹が立つ。
「だって陵介と付き合ってんだろ」
「……」
頭を抱えそうになった。
過去のことだと分かってても、やっぱりそこが引っかかってたのか……と下唇を噛んだ。
きっと嫌味半分で言ってるんだろうけど、勘違いしたまま過去の出来事をいまだに信じてるということ。
そして、ずっと気にしてたんだろう。
「それ、先輩の勘違いですから」
「は?今さらいいよ」
隠すことなく眉を寄せて嫌悪感丸出しの表情。
もうずいぶん経つのに、いつまでも勘違いされたままなことに苛立つ。