先輩、お久しぶりです
「でも、千春が誰と付き合おうと俺が口出しする資格はなかったな、悪かった」
「いえ、先輩が私のこと考えてくれてたのに、私の方こそ――」
「いや、俺が――」
そうやっていつまでも謝り合うやり取りに、お互いだんだん可笑しくなってついに笑ってしまった。
「プッ、あははは」
「ハハハ、お互い謝りすぎだな」
「そうですね、もうやめましょう」
クスクスとしばらく笑いが止まらず、時々目が合ってはまた困ったように笑い合った。
こんな些細なやりとりなのに、今までつまらない事でいがみ合っていた気持ちが緩く溶けた気がして微かに心が暖かくなった。
「千春の笑顔、久しぶりに見た気がする」
「え?」
な、なに急に。
「あまり笑わなかっただろ」
「この間的場さんとランチした時も笑ってましたよ」
「アイツとのやりとりなんかカウントしてない。俺の前では笑ってなかっただろ」
「そう、でしたっけ?」
俺の前では……って、そりゃ先輩になに言われるか緊張してうまく笑える自信がなかったからだけど。
それにお互い顔を合わせれば嫌味ばかり言い合って、笑顔より眉間に皺ばかり寄せていた気もするし。
私だって先輩の笑顔を久しぶりに見たかもしれない。
そう考えたら、お互い5年振りに気兼ねなく笑い合えたのはある意味凄いことなのかも。