先輩、お久しぶりです
当初は気まずい気持ちになるかと思いきや、久しぶりの二人きりの食事は笑い合って楽しく終えた。
食後のコーヒーも先輩が言っていたとおり美味しくて、久々に苦いと感じることもなかった。
「今日は急だったのにありがとな。また連絡するから休み空けといて」
「はい、分かりました。――あっ」
「なに?」
「すみません。今度の土曜は予定があるので、それ以降なら大丈夫です」
聡太と約束しているのを咄嗟に思い出したのだ。
するとなぜか先輩は訝しそうな顔をして聞き返してきた。
「誰かと会うの?」
「あ、はい。もと……友人と」
元カレと素直に言うかどうか一瞬悩んでから、友人ということにした。実際友人だし。
「……了解」
少し間があった気がしたけど、気のせいだろう。
帰りはまた同じ電車に乗りこんで、このあいだと同じように私の二駅前で降りて行った。
発車した車内から追い抜いていく先輩に少しだけペコリと頭を下げると、それに気づいた先輩が少し微笑んで軽く手を上げて返してくれた。
なんだかまた学生時代に戻ったようで、気持ちが高揚してしまう。
当初はなるべく二人きりになるのは避けたかったし顔を見るのも話すのも気まずかったのに、久しぶりに楽しむことができて良かった。
少しずつ、また昔のように普通に戻れたらいいのに……と思うのは都合良すぎるかな。