先輩、お久しぶりです
「向こうで知り合った彼女?」
「うん、そう。彼女も同じホテルで働いてる同期で、大変な時期に凹んでた俺のことを支えてくれたんだ。それでそのうち付き合うようになって……年が明けたら結婚する予定」
「そうなんだ。え、でも彼女は向こうで働いたまま?」
「いや、一緒にこっちに来る予定。とりあえずしばらくは働いて、もし子供が出来たら辞める予定にしてる。ずっと一緒に転勤願い出すわけにもいかないだろ」
子供……。もうそんなことまで考えてるんだ。
そりゃ結婚するんだから当たり前か。
「そっか……なんか凄いね、聡太は」
「何が?」
「すごく計画的に人生歩んでる気がして羨ましい」
別れた元カレとはいえ、どんどん進んでいく聡太が私よりずっと早く大人になっていくようで、焦燥感に駆られてしまう。
私なんて、いまだ昂良先輩のことでモヤモヤしてるっていうのに。
「何言ってんだよ。千春だって学生の時からめっちゃ頑張ってるの見てたから、俺も頑張ろうって思えたんだよ。だから別れても千春に恥じないようにって焦ってたんだからな」
「え?」
「実は失敗しまくってすっげー落ち込んで、もう辞めようかなって時もあったし……。でもその度に頑張ってこい!って背中押してくれた千春の顔がチラついて、また頑張ろうって思えたんだよ。だから羨ましく思うことなんて何もないよ。むしろ千春のおかげでここまでこれたようなもんだし」
やっぱり笑顔で再会した裏では苦労してたんだ。
軽く羨ましいなんて口にしたことが、いまさら恥ずかしくなる。