先輩、お久しぶりです
――と言いつつ早くも後悔。
手料理を食べさせるイコール家に来る。
つまり、汚部屋に呼んでオモテナシするということ。
聡太に会うために朝からどういう格好をして行こうか悩んで、取っ替え引っ替えした服が散乱したまま。しかも部屋干しの洗濯物も吊り下げてるし、明日掃除しようと思って掃除機もかけてない。
そんな部屋に誰かを招き入れるなんて、ご飯美味い不味いのプライドより、女としてのプライドが……。
「あ、あの先輩」
「ん?」
「今日じゃなく、別の日にしません?」
「今さら?」
「はい……今さら」
「もう会計済ませたんだけど」
どうしてもこれから行きたい、腹減ったから食べたい!とワガママを言うので、マンション近くのスーパーで買い物を終えて、具材を袋に詰めているところだった。
「いや、でも今日はちょっと……」
「あんな啖呵切っといてここに来て怖気付くとか、ないだろ」
で、ですよね……。
「あ〜!めっちゃ腹減ったわ〜美味しい料理作ってくれるの楽しみ〜」
「――っちょ!」
他の買い物客がたくさんいるのに、そんな大きな声で言うのやめてぇ。
先輩がわざと楽しそうにしているのを他のお客さんが微笑ましく見ている。
「いいわね〜、新婚さんは」
ホホホと白髪頭の少し腰の曲がったお婆さんが微笑みながら、とんでもないことを口にして行った。