先輩、お久しぶりです

結局、玄関でしばらく待ってもらうことに。
いくらなんでもこの大惨事を見られるわけにはいかないため、慌てて片付けに奔走した。


散らかった服と吊り下げた洗濯物を素早くクローゼットに押し込んで、床はコロコロで簡単に掃除。


食器類は片付いてるからOK!小物類もそれなりに適当に並べて、臭い消しのスプレーを振りかけて、ひとまず人を呼んでも恥ずかしくない程度の見た目にはなった……と思う。ふぅ。


「どうぞ」


ガチャリと玄関を開けて、しぶしぶ昂良先輩を招き入れた。


「へぇ綺麗にしてんじゃん」

「まあ、それなりに」


こんなのいつも通りですけど、と平静を装ってみた。
一人暮らしの1Kマンションなんて、それほど広くはないし、散らかった物もクローゼットに詰め込んでしまえばなんとかなる。
細かなところが掃除出来てないのが唯一心配で、そこには気付かないで欲しいと願うのみ。


「玄関先で待たされたから、てっきり色んなもんクローゼットに隠してんのかと思ったわ」


……お見通し。


「――わ、分かってても言わないのが礼儀ですよ!」

「やっぱそうなのか」


素直になったかと思ったのに、やっぱり嫌味たらしいのはいつも通りだった。


「それより、料理作るんでソファで休んでてください」

「俺も手伝うわ」

「いいですよっ」


全力で拒否しても腕まくりしながらキッチンへと入ってきて、私の隣に立った。

< 60 / 152 >

この作品をシェア

pagetop