先輩、お久しぶりです

「手際良く二人で作った方が時間短縮できるだろ」

「先輩料理出来ないですよね?」

「いや、最近は自炊するときもある」


学生の時は刻まれた野菜パックを買ってきて、そのまま放り込める鍋しか作らないって言ってたくらいほとんど料理も作ってなかったのに、ほんとに手伝えるのかな。


「とりあえず何からすればいい?」

「じゃあ玉ねぎ剥いてください」

「了解」


私はお鍋に水を入れてそれを火にかけた。
片方のコンロにも鍋を置いて火をつけ、冷蔵庫からバターとミルクを取り出し小麦粉と一緒に弱火で練っていく。


木ベラでミルクを調整しながらひたすら弱火で練りつつ、隣で何食わぬ顔して手伝っている昂良先輩をチラ見した。


そこには違和感しかなくて、どうして先輩が隣にいるんだろう?と不思議な感覚になる。
5年振りにこんな間近で二人一緒にいることが夢じゃないかと思えて仕方がない。


ついこの間まで消息すら分からなかったのに……。


ボーっと考えながら練っているといい感じにトロみがついたところで、塩胡椒とコンソメを入れて味の調整をして火を消した。
なのに、まだパリパリと玉ねぎを剥いている……。


先輩の手つきがあまりにもぎこちなさすぎて、あとどれくらいかかるのか芯まで剥いてしまうんじゃないかと心配になる。


ていうか、やっぱ慣れてないんじゃん!


「何見てんだよ」

「不器用ですか?」

「慎重と言え」

「時間かけすぎ」

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