先輩、お久しぶりです
疑惑
日曜はクローゼットに投げ入れた洋服たちを片付けて、その他の場所も念入りに掃除をして日が暮れた。
先輩の好きな人がどんな人なのか分からないなりにずっと気になって、少しでも手が止まるとボーッと考えてしまうため雑念を振り払うように、いつもより念入りに掃除をしたのだ。
もうどうにかなりたいなんて思ってないのに、少し距離が近づいただけで気になるなんて、いつまで過去を引きずってるんだと自分に言い聞かせながらゴシゴシと。
拭き掃除もしたし窓も全開にして空気も気持ちもパァーッと入れ替えた。
そして気分新たに月曜日となりいつも通り出社。
お腹に力を入れて、きびきびと仕事をこなしていく。
昂良先輩と再会してからペースが乱されていたけれど、本来の私はこういう感じだったのを忘れていた。
だからと言うわけではないけど、顎で受話器を挟んで髪を耳にかけながらペンを片手にキーボードを打ちつつ電話対応してみた。
これぞ秘書!出来る女!と内心楽しんでいると、コンコンと秘書室のドアをノックする音が聞こえた。
誰かお客さまが来たのかとみんなそちらへ目を向けると、ドア近くに座っている大井さんが席を立って対応してくれた。
しばらくドア越しに会話をしてから、大井さんはドアをさらに開けて中に入るよう促すと、ベビーカーを押した綺麗な女性がスッと中へ入ってきた。
「こんにちは。お久しぶりです」
彼女はみんなに挨拶をすると、先輩秘書の徳田さんは鈍い顔をして気怠げに立ち上がり、デスクの前に出た。
「あら、こんにちは加藤さんじゃないですか。あ、今は違いましたっけ。今日はどうしたんですか?」
「主人の仕事がこちらであったので、久しぶりに顔を出してみようと思ったんです。みなさんお元気にされてました?」
「ええ、おかげさまで」