先輩、お久しぶりです

彼女は誰なんだろう?今まで見たことない人だ。


徳田さんは腕組みしつつ笑っているのに目が怖い。外向きでも内向きでもない、感情のこもらない口調で返事をしていた。


「あ、これお土産です。秘書課のみなさんで召し上がってくださいね」

「お気遣いありがとう」


お互いに笑顔のわりに、なぜか二人のやり取りがやけに剣のある態度に見えて、見ているだけの私はソワソワしてきた。
他の先輩方も息を潜めながら二人のやり取りを見ているのが分かる。


ふと下を見ると生まれて半年くらいか、ベビーカーの中で親の雰囲気の悪さと相反して赤ちゃんがスヤスヤと寝ている。可愛い。


「それにしても秘書室もあまり変わらないですね。私がいた頃はもう少しバタバタしてたけれど、みなさん慣れてらっしゃるみたいで」


彼女は私たちを一人一人確認するような動きをしながら、周りを見渡している。
以前ここにいた人なのか、自分がいた時はこんなに暇そうじゃなかったと遠回しに批難している。


「そうね。みんな優秀な人たちばかりだから、あなたがいる時よりバタバタはしないわよ」


徳田先輩も負けてはいない。
二人の視線からバチバチと火花が散ってるように見えるのは私だけだろうか……。


「そのわりにみなさん冴えないお顔してますけど、大丈夫ですか?役員から無理難題押し付けられてません?」

「ええ、おかげさまで楽になりましたから~」


徳田さんの笑顔が引き攣っている。
こんな険悪な雰囲気は3年間一緒に働いてきた中で一度も見たことがない。
なんだかどんどん雲行きが怪しくなってくる二人にハラハラしてしまう。
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