先輩、お久しぶりです
昂良先輩。
あの頃よりも凛々しくなって、男前に磨きがかかったのは見てわかる。
そしてさらに眼光も鋭くなった気がする……。
まさか、同じ会社に就職していたとは誰が予想出来ただろう。
もし知っていたなら他に就職……するわけはない。
こんないい会社蹴るなんて、就活に苦しむ学生の立場ならもがいてでも勝ち取りたいところ。
やっとの思いで就職できたのに、まさかの人物と偶然同じ会社で働いていたなんて、どれだけの確率なのだろうか。
だから幸い部署が違ってくれただけでも助かった。
けれど、あれからプッツリ途絶えてしまった昂良先輩との縁が、こんなところで繋がったことに多少なりとも驚いてはいる。
探せど尋ねど見つからなかったのに、こんなところに隠れていたなんて。
灯台下暗し。
「若宮さん、ちゃんと飲んでる?」
昂良先輩の隣に座る人に声をかけられた。
「あ、はい。いただいてます」
ただし数年経ってもよく思われていないのは、この目つきから察するに余りある。
きっと先輩は誤解したまま、私のことをビッチか何かだと勘違いしているんだろう。
そう思われていたところで、先輩とは二人で遊びに行くだけの間柄で、特に甘い関係ではなかったからどう思われてようが構わない。
私の片思いで終わっただけの関係に、未練はない。
ただ、あの時の出来事は私の心にトラウマとなって残っているのは確か。
それを久しぶりに見たこの顔でまた思い出しただけ。
結局私との連絡を一切絶ってまで嫌っていたんだから、この視線も納得か……。
お互い初めて会ったときの印象も最悪だったのだ。