先輩、お久しぶりです

その後、加藤さんが来て秘書室の雰囲気が殺伐としたものの、しばらく経つといつもどおりのみんなに戻ってまた仕事に励んでいた。


なのにデスクに内線がかかって対応していた徳田さんが、受話器を置いた途端机に肘をついて頭を抱えていた。それを見た青山さんが、どうしたのかと話しかけた。


「最っ悪!……木村役員がお茶二つ持ってこいだって。アイツのためにお茶持って行くなんて絶対嫌だぁー!」

「うわ〜……」


それを聞いたみんなは、あからさまに同情した顔つきになっている。
一応お客さまなのにとは思うけれど、さっきのやり取りを見て行きたくないのは察しがつく……。


やはりこういう場合、加藤さんを知らない私が持って行くのが下っ端の役目なんだろうなと、やや無言の圧力を感じながら小さく手を上げた。


「あの、私が持って行きましょうか?」

「え!若宮ちゃんホント!?」

「はい、私は特に彼女のこと知らないですし、先輩方の手を煩わせずに済みますから」

「あ〜!なんていい子!恩に着るわ」

「さすが若宮ちゃん!デキる子は違うよ」


彼女をもてなすのがそんなに嫌なのか……。
分からなくもないけど、私が行かなければさらに不機嫌な先輩方を見ることになると思えばお安い御用だ。


「じゃあ、いってきます」

「「よろしくーー!がんばれーー!」」


と謎のエールを送られながら給湯室へ向かった。
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