先輩、お久しぶりです

お盆にお茶を用意して、木村役員の部屋のドアをノックして中に入ると、赤ちゃんを抱っこした木村役員とソファに座る加藤さんがこちらを向いた。


「失礼します」


向かいあう二人の前にお茶を置いてから下がろうとして、木村役員に声をかけられた。


「若宮さん赤ちゃんだよ、ホラ」


抱っこしたまま嬉しそうに赤ちゃんをこちらへ向けて、顔を見せてくれた。
さっきまで寝ていたのに起きたんだろう、目をぱちぱちさせて木村役員の顔をじっと見つめている。


「可愛いらしいですね」


赤ちゃんは女の子なのか、嫌味なく本当に可愛い。
頭には大きなリボンのついたヘッドバンドをつけていて、おめかししているのがなんともキュートだ。


それに木村役員の可愛がりかたが、まるでじーじと孫のようなほんわかした光景に見えて、少しほっこりしてしまった。


「加藤さん、君が退職した後に後任で入ってきた若宮さんだよ」


木村役員がすかさず私を紹介してくれた。


「こんにちは。先ほど秘書室に行った時いたかしら?」

「あ、はい」

「そのわりに挨拶が無かったけど」


直接対峙すると、やっぱり好戦的でやりにくい……。これじゃ徳田さんたちと対立するのも頷けてしまう。
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