先輩、お久しぶりです

「なんかごめんね。せっかく誘ったのに雰囲気気まずくなっちゃって」


村元さんも気になってたのか、松下さんがいなくなるとすぐに謝ってくれた。 


「いえいえ、お二人とお食事できて楽しかったのでまったく気にしてないです」


気にしてないといえば嘘になるけど、食事に誘ってもらえただけでも嬉しかった。
だから、謝られるほどのことではない。
気にしてくれる村元さんは、見た目と同じで性格も良い人かもしれない。


「あのね、実はここだけの話、松下さん前に藤井さんに告白して振られたことがあるみたいなの。その後に付き合った加藤さんが秘書課の人だったから、秘書さんに対してちょっと当たりがキツくなってるだけだと思うんだ。だから気にしないでね」

「そ、そうなんですね……」


それはそれでショッキングな話を聞いてしまった。
加藤さんとのことが原因ではあるんだろうけど、秘書課の人間を丸めて一括りにされるのはどうしたものかと思ってしまう。


「でもこれに懲りずにまたご飯一緒に行きませんか。今日は若宮さんと初めてだから、緊張しちゃうかもと思って松下さんも誘ったんですけど、次は二人で」


えへへと可愛らしく言われると憎めないし、また誘われて嬉しくなった。


「そうですね。でも松下さんもいい方なので、また三人でも私は嬉しいです」

「うあ〜!若宮さんいい子だな〜」


両腕ごとギューと抱きつかれて身動きが取れなくなっていると、そこへ松下さんが戻ってきた。


「あなたたち何してるの?」


訝しそうな顔で私たちを見ている。
歩道脇で女性同士が抱き合ってれば、確かに怪しむ場面ではある。


「若宮さんが松下さんのこと好きだって言うから、いい子〜!て抱きついてたんですよ」

「な、何言ってるの!?」


松下さんは怪訝な顔で驚きつつ、顔を真っ赤にして照れていた。それが意外にも可愛くてつい私も笑ってしまった。


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