愛しさくらの君へー桜の鬼・現代編-【完】
さて、何がいいかな。氷室が戒のところに来てよく読んでいたのは……とかだったかな。ほんとジャンルが絞れねえな。スポーツ系からバトルまで何でもありだ。
桜葉の今の状態で見せられるものは、よく考えた方がいいだろう。
「って、ああ! 二人ともマジでやっちゃ駄目だって! 氷室くんの美貌があああ!」
「大丈夫、氷室だから」
「だから!」
ぐっと親指を突き立てる恋人たち。似過ぎだ。
『大丈夫だぞ、桜葉。俺だから』
『本人に言われたら桜葉もどうしようもねえな』
本人に肯定されていた。
いやいやいや! 駄目でしょう!
「だーっ! 氷室くんに手ぇ出しちゃ駄目―――!」
『そうだ! 俺に手ぇ出していいのは桜葉だけだ!』
『お前は結局何が言いたいんだ!』
ボカッとまた殴られた。
「確かに桜葉ちゃん以外が手なんて出せないけどね。氷室先輩怖くて」
『ふっ』
『ふ、じゃねえよ! ぶっ飛ばされてえのかてめえ!』
三人には聞こえないけれど、漫才のようなやり取りも開催されていた。
「氷室くん怖いの?」
「だって氷室先輩、『ああ? 俺以外の人間が桜葉に近づいていいと思ってんのか? ああん?』みたいなヤンキ―顔負けの迫力で、桜葉ちゃんに声かけようとした男子とか睨みつけてるんだよ。知らなかった?」
「……………」
知らなかったよ。そしてたぶん、知りたくなかったよ。
『………』
『お前もお前で照れてんじゃねえよ』
櫻からお決まりのど突きを受ける氷室。今の照れるところじゃねえだろ。