愛しさくらの君へー桜の鬼・現代編-【完】
「おーい。ひむも混ざりたくなっただろ。いい加減目ぇ覚ませっての」
戒が再びドカッと座る。
「……本気でいい加減にしろよ、氷室」
戒の声が鋭くなる。それを聞いた氷室はきっと口元に力を入れた。……戒。
『櫻、どうしよう……』
『何がだ?』
『俺……どうしても桜葉に逢いたい』
逢いたい。逢いたい。逢いたい。
焦がれる。焦がれる。焦がれる。
愛しい愛しい―――君に逢いたい。
『氷室。それは《禁忌》だ』
魂だけの存在が、人前に姿を見せる、それは。
『やっちゃいけないことだ』
おそらくは、自分の存在だっていけないことだろうに、櫻は氷室を𠮟咤していた。
『ああ……たぶん、わかっている』
氷室は答える。
《禁忌》を犯しても、もう一度だけ―――……