恋の♡魔法のチョコレート
リュックを背負って家庭科室まで走った。

もうみんな揃ってるかな?
打ち上げ始まってないかな?

さっきまで行くのが重かったのに、急に早く行きたくなっちゃって、本当に切り替え早いな自分って思った。

小鳩も来てるかな?
久しぶりに顔見るかも。

あの時…、森中部長に話があるって言った小鳩を止めたくて咄嗟に割り込んだ。

一瞬話は逸れたけど、そんなのその場しのぎだ。それで乗り切れたわけじゃない。

その話を聞かなきゃいけない時は来るから。

聞いたら、私はどうしたらいいんだろう…

「あ、メリー!遅いよ~!」

「ごめん、ちょっと…あれしてて」

「見て見て、ゆいぴーが作ってきてくれたんだって!」

そらぴょんに手招きされ、呼ばれるまま調理実習台の前に立つと美味しそうなお菓子たちがキレイにお皿に盛り付けられていた。

フィナンシェにクッキーに、ロールケーキ…!?
そんなのまで作れるの、小鳩は…!?

「テストも終わったんで、時間ができまして…いろいろ作ってみました」

「ゆいぴー最高!うれぴよ~~~~!」

その中に、チョコレートはひとつもなかったけど。
チョコレートは絶対に作りたくないんだ。そんな意思を感じた。

「俺生クリームも超好きなんだよね♡生クリームに溺れたいもん♡」

「…気持ち悪いですね」

「ゆいぴー眉毛!そんな寄せない!メリーは?生クリーム!」

「私は…溺れたい」

「ほらー!やっぱそうじゃん~!」

いつもと変わらない小鳩で、その眉間にしわを寄せた顔だって何度見たかな。
でも変なの、そんな姿もチカチカ見えちゃって。

「お待たせ~!みんな揃ってるー??」

2リットルのジュースとお茶のペットボトルを抱えた森中部長が元気よく家庭科室へ入ってきた。

森中部長の上機嫌とは逆にそらぴょんは大人しくなったけど、まだ上手く喋れないんだ一緒に文化祭だってしたのに。

…そんな気持ちも、よくわかっちゃうんだけど。

なんならもっとわかるようになった。
好きだって自覚すると今までできてたこともできなくなるよね。
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