恋の♡魔法のチョコレート
空いていたイスに白沼先生が座った。
もらったフィナンシェはそのまま両手の中だった。

「魔法のチョコレート…の話は置いといて、一応話はしましたよ」

「え、本当ですか!?」

「でも!まだ未確定ですよ、話しただけですからね、かなり難しいことですからね!」

「ありがとうございます~、嬉しいです!気合入れてがんばりますね!」

「だからまだ未確定ですって!」

何もわからないそらぴょんと私の前で繰り広げられている会話。
もちろん部活のことなんだけど、活動内容のことは基本森中部長任せだったし実は全然何してるか知らなくて。

「でも、そんなに良いものなんですか?魔法のチョコレートって」

白沼先生が首を傾げた。

表情から見てだいぶ疑ってる。

「いいものですよ、すっごく!」

それに訴えかけるように森中部長がグッと視線を飛ばした。

「…そうなんですか」

全然伝わってないけど。男の先生ならそんなものかな、若いけど、そーゆうのは別に興味ないよね。告白する勇気をチョコレートにゆだねたりしないよね。

「じゃあそれはすごく美味しいんでしょうね、魔法のチョコレート。僕も食べてみたいですね」

穏やかな空気が流れた。

疑ってた表情から一変、のどやかな表情で。

でもその言葉には少しだけ違和感だった。

「白沼先生、魔法のチョコレートがどんなものか知ってるんですか?」

だから気になって聞いちゃった。

「小鳩くんが作るチョコレートの名前ですよね?美味しいらしいって職員室でも言ってましたよ。誰も食べられてはいませんが」

「…それだけですか?」

「それだけって…どうゆう意味です?」

“うん、あるよ。告白が上手くいく魔法のチョコレート、でしょ?”

髪を掻き分けて、耳にかけながらにこっと微笑んだ琴ちゃん先生を思い出した。

小鳩のチョコレートを食べたいと言って、小鳩のチョコレートはおいしいって言って、何より食べたことがあって…
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