恋の♡魔法のチョコレート
「人の手では限界がありますね、どれだけ潰しても人の手以前に機械がない限り無理でしょう。あとはローストの時間と砂糖の分量…、予備がなくて砂糖が少なめになってしまったのが味に響きました。ビターを目指しましたが、カカオ感が強くてこれは食べるのも一苦労…」

右手を顎に当ててペラペラと話すことが止まらないらしい。

…チョコレートトーク、わりと間違ってなかったかもしれない。

こんなイキイキ話すこともあるんだ、小鳩って。

「奥が深いです」

ニッと笑った。

気がした。

嬉しそうに。

「小鳩ってチョコレートに興奮するタイプ?」

だからつい言っちゃった。

小鳩のそんな横顔を見てたから。

一気に表情が戻っちゃった、最初の時みたいに。

「もう出てってもらえますか?食べましたよね?」

キッと睨むように、威圧感が押し寄せてくる。

「あぁっ、待って!待って、違うの!」

両手をパーにして小鳩の前にこれ以上は言わないでと訴える。これ以上聞いてしまったら間違いなく追い出されると思ったから。

「お、お願いがあって…っ」

私の目的は魔法のチョコレートを手に入れること。

そして、それをオージ先輩に渡して告白すること。

まだ叶えられてない。

あれが魔法のチョコレートかは怪しいけど。

けど…っ

「あなたの願いを聞く義務はありません」

「…っ」

それでも私はそれに賭けようって決めたから。

だから、どんな手を使ってでも手に入れてやるんだ。

「私、チョコレート研究会入部希望者です!」

小鳩結都の魔法のチョコレートを!
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