恋の♡魔法のチョコレート
「結構ですっ」

ペッとつまみ出され、家庭科室から廊下に投げられた。

えっ、ちょっと!なんで!?

すぐに立ち上がって閉められたドアにへばりついた。

「ねぇ、入部希望者だよ!?希望者追い出すって何!?」

あんな細い指のくせに力はあるのか全然開かない。引き戸になったドアを力強く引っ張ってみてもびくともしない。

「ちょっと!聞いてる!?私が入れば研究会から部活になるんだよ!そしたら部費も上がるし、…あ!砂糖も買えるよ!?」

部活に昇格すればメリットしかない、ちょっと卑怯かもしれないけど咄嗟に思い付いた策だった。

しかもさっきまでいい感じだったし、すんなり歓迎してくれるかな~ってだいぶ甘かったけど。

カカオから作ったチョコレートより全然甘かった。

ガラッ、少しだけドアが開いた。

そこから目を細めた小鳩が上から私を見てる。

「…っ」

高圧的な眼差しにビクッと震える。

何を言われるんだろう…、言われる前に何か言った方がいいのかな?

「にゅっ」

「チョコレートに興味ない人は不要です!」

ピシャッ!と完全シャットアウトで今度は鍵まで閉められた。

“入部希望です!”ってもう一度言おうと思ったのに、最初の一言だけしか言えなかった。

「…~っ!」

悔しい、なんだかすっごく悔しい。

何が悔しいのかって聞かれたらわからないけど、もうめっちゃめーーーっちゃ悔しい!!!

てゆーかチョコレート興味あるし!

好きだし!

そりゃカカオから作るなんてことしようって思ったことないけど、食べるの大好きだし!!!

「…自分はチョコレートにしか興味ないじゃんっ」

あんなにイキイキ語っちゃってさ、普段超無愛想なのに、そんな顔もするんだとか思っちゃったんだから。

「………。」

あの表情は案外悪くはなかったのに。
< 13 / 159 >

この作品をシェア

pagetop