恋の♡魔法のチョコレート
「詩乃!来てたの!?連絡しても全然…っ、どうしたの!?顔、めっちゃっ」

「ひどいでしょ、ひどいよね、うんうんわかってる」

時間は経ってもあまり変わらなかった。
瞼が重くなって、むしろ悪化したかもしれない。

もう帰宅時間だった。

ホームルームも終わってぞろぞろとみんなが出ていく頃、1人教室に戻ったみたいな。

「…どうしたの?」

私の顔を見た咲希が近付いてきた。

また俯いちゃった。

もう泣きたくはないんだけど。

「私…さ」

「うん…」

「なりふり構わず突っ込んじゃうし、勢いでどうにかしようとしちゃうし、突っ走っちゃうこともあるけど…」

きゅっとスカートの裾を握る。
すごく力が入っちゃって、少しだけ震えちゃった。

「拒否られたら辛いじゃん、それなりに傷付くじゃん」

「詩乃…」

「小鳩、私のこと嫌いになったかなって…」

ドンッと叩いたテーブルの音、耳の奥にまだ残ってる。

小鳩に拒絶されたみたいだった。

「……。」

「…なんてね、またらしくないこと言っちゃった!」

顔を上げた、笑顔を作って前を向いた時だった。
がばっと咲希が私の胸に飛び込んできた。

「咲希!?ここ教室っ」

ほとんどの生徒が帰っちゃったとはいえ、まだ何人かいるし、てゆーかそれが逆に目立つっていうか、突然のできごとにみんなが私たちを見てる。
私なんてひどい顔してるし、咲希まで泣きそうな顔してるし。

「ごめんね、私何にもできないけど…っ」

「…そんなことないよ」

「私はずっとずーっと詩乃のこと大好きだから!」

でもその気持ちは嬉しくて、それだけで心があったかくなる気がした。

友達がいるって心強いね。

「…うん、私もっ」

同じように咲希の背中に手をまわしぎゅっとしようと思った…だけど。

「お取込み中すみません」

「!?」

「手が離せないようでしたらまた改めますが」

「小鳩!?なんで!?」

目の前にスッと現れた姿にこれでもかってぐらい目が見開いちゃった。

「え、小鳩くん??」

咲希も私から離れて小鳩の方に振り返った。

「え、…どうしたの?」

「柳澤さんに用があったんですけど」

「私に!?何!?」

「お取込み中のようなのでまた…」

サッと右手を上げて、本当に帰ろうとする小鳩を引き留めた。咲希が。

「全然!全然そんなことないよ!どうぞどうぞ!!」

「えっ」

強引に背中を押されぐいぐいと小鳩の方に押し付けられ、廊下まで追い出された。

そこまでしなくてもいいのに、私の答えも聞かずぐいぐいと。

案外咲希は力持ちなこと今知った。
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