恋の♡魔法のチョコレート
新婦控室と書かれた扉の前、一気に緊張がぶわっと体中に流れた。

なんで私がこんなに緊張してるのかわかんないけど、てゆーか結婚式の雰囲気がまず緊張するし!こんなとこ来たことないもん!

…でも。

小鳩のが緊張してるかな。

いつも言葉数が少ない小鳩だけど、今日はそれ以上に少ない気がする。

「……。」

「…小鳩?」

扉の前、立ったまま少し俯いてじっとドアノブを見つめる小鳩。

左手に持った紙袋には昨日作ったチョコレートが入ってる。

きっとみんなおんなじだよね、一歩踏み出すには誰かに背中を押してもらいたいんだ。

「…!」

トンっと小鳩の背中に触れる。

小鳩が一歩前に進めるように。

私の方を振り向いて目を合わせた。

コクンと頷いて、声が出ないようにパクパクと口を動かした。


がんばって、って。


もう一度扉の方を向いた小鳩が小さく深呼吸をして、コンコンっとドアを叩いた。

琴ちゃん先生の声が聞こえる。

そのままドアノブに手をかけ、ゆっくり扉を開いた。

「あ、小鳩くん!柳澤さんも、来てくれてありがとう」

鏡の前で凛とした立ち姿で振り返った。

純白のドレスに身を纏った琴ちゃん先生。

キレイだった、すごく。

ふわふわと白が舞っているようで、柔らかく笑う琴ちゃん先生によく似合っていた。

「琴ちゃん先生っ、ご結婚おめでとうございます…!」

「ありがとう」

「それで、あのっ、おめでとうございますっ」

一応持ってきていたお祝いのプレゼントを渡した。

お祝いの品って何あげたらいいのかわからなくてペアのタオルを…めちゃくちゃ地味な発想だったかもしれない。
もっと気の利いたのがよかったかな…。

「えー、わざわざいいのに。ありがとうね」

ぺこりと頭を下げ、じゃあ私はこれでとその場を離れようとした。

小鳩と琴ちゃん先生、2人の方がいいかなって。

だけど、小鳩が私のスカートの裾を掴んだから。
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