恋の♡魔法のチョコレート
「メリーって告白しないの?」

チョコチップクッキーを食べながらそらぴょんが聞いてきた。
森中部長がいなくなった家庭科室で、相変わらずお茶会みたいな活動中に。食べてるのはどこのスーパーでも売ってる箱入りのクッキーだけど。

「………。」

同じようにチョコチップクッキー食べる私は今口に入れちゃったばかりで何も話せない。

「まぁメリーのことだから俺が言うことじゃないし、メリーのタイミングとか気分とかあると思うけど、ずっと告わないままでいいのかなって」

「……。」

「たまにメリーの話聞くけど、メリーは…」

クッキーに全部水分持ってかれて口の中がパサパサだ。このままじゃ上手く声が出せなくて、持っていたペットボトルのお茶をグビーっと一気に飲んだ。

「私、告白しようと思うの!!」

「え?もう決まってたの!?」

「さっき決めた!」

「えっ!?」

ドンッと勢いよく蓋を閉めたペットボトルを調理実習台の上に置いた。

考えてた。

どうしようかなって、気持ち言ってもいいのかなって。

“それで、好きな人に渡すんだよ!”

これを逃したらまた言えなくなっちゃう気がする。

「そらぴょん!私チョコレート作って告白する!」

なぜ人は気合いが入ると立ち上がってしまうんだろう。

さっきの森中部長みたいに、力が入り過ぎちゃって危うくイスが倒れそうになった。

「メリー…」

「告白しようと思うの!小鳩に!」

グッと握りこぶしを作って少し上を見る。

ここは家庭科室だから空も何も見えないけど、あの空に向かって誓いを立てるように。


「「………。」」


しばらくそのポーズ取ってみたんだけど、全くそらぴょんの反応がなくてすぐに目線を下げた。

「…なんか言うことないの?てゆーか驚いたりしない?今サラッと暴露したつもりなんだけど…」

「え?何?あ、あぁ、ゆいぴーのこと?」

結構ここぞとばかりに言ったつもりだったんだけど、変わらずクッキー頬張ってるそらぴょんにこっちからリアクション求めちゃった。

「そっかー!って思ったけど、そこまで特には。だって最初、メリーはゆいぴーが好きでチョコ研入ったと思ってたから」

「………確かに!!!」

そーいえばそんなこと言われたな!

あの時はそんなつもり全然なかったし、違うって否定してたけど、それがこうなるとも思ってなくて。

「もっと驚いてほしかった?ごめんね、リアクション大名になれなくて」

「いいよ、大名までは求めてないし」

ササッと乱れた髪を直しながらしれっとイスに座った。

別にサプライズ発表したいわけじゃないから、ただ普通に言うのはちょっと恥ずかしくて勢いに任せて言っただけだから。

「でもゆいぴーならいいと思う」

もう一度クッキーの箱に手を伸ばして新しくクッキーを取り出し、そのあと私にどうぞと箱の開いた方を向けた。

「だってゆいぴーいいやつじゃん!」

ケラっと笑って、すっかり見慣れちゃったこの空色の髪も明るい気持ちにしてくれるものだよね。

「友達もできたし!」

「え、そーなの!?誰?クラスの子?」

「俺!」

「あー、じゃあまだできてないなそれ~」



私、小鳩に好きって伝える。
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