恋の♡魔法のチョコレート
って思ってたんだけどね。

「咲希、ハッピーバレンタイン~」

「私にもくれるんだ」

そらぴょんと森中部長のがいい感じの中、家庭科室の隅っこをお借りしてラッピングして来た。
さっそく教室で会った咲希に出来立てほやほやを渡した。

「好きな人に渡す♡が伝統だから咲希にも!」

「えー、ありがと~」

「あ、でも気を付けて!絶対平行にして持って!1ミリたりとも傾けないで!」

「えぇ!?なんで!?チョコレートだよね!?」

チョコレート…
なんだとは思う一応、材料はチョコレートだし、そこは間違ってない…だけど。

「全然うまくできなかったの」

「そんな難しいチョコレート挑戦したんだ?」

咲希の席の前、はぁ~~~っと長めの息を吐きながら両手で顔を覆った。
座ってる咲希が下から顔を覗き込んでる。

「ホワイトチョコレート固まらなかった…」

「え?」

「カップ型のクッキーにね、チョコレート流し込んで固めようと思ったの。レシピ見たはずなのにカップクッキーパサパサなんだけど、それはいいのもう、予想の範疇だから。いつもミルクチョコだからホワイトがいいなぁって思って、ホワイトチョコで作って上に何かトッピングしようかなって!…昨日から冷やしてたのに全ッ然固まってなくて…」

「へぇ、それは…残念?だね」

昨日の部活からだからざっと計算しても10時間は冷蔵庫の中だった。これで固まらないなんて、絶対おかしい。

「チョコレートって溶かして固めるだけじゃないの?」

「私もそうだと思ってた~!でも小鳩に牛乳とか生クリーム入れた方がいいって言われて、だから…っ!」

「だから?」

「あれ、違うっけ?言ってなかったっけ?言ってたと思うんだけど、なんか自信なくなってきた…」

「え、いいのそれ…?」

チョコレートフォンデュの時牛乳入れてたもん、そうするとあっさりしておいしいって…

でもそーゆう話じゃないっけ?

それだけやたら覚えてるから全部それになっちゃってるのかな…

やばい、これだけチョコ研やってて何も身についてない。普段どれだけ小鳩任せだったのか如実に表れてる。

「折れた…」

「何が?」

「心が」

「…どんまい」

それでも、私なりにやったつもりではあるんだけど。

だけどいつも何するのにも小鳩に聞いちゃってたし。

「でも渡すんでしょ?」

覗き込んだ咲希と目を合わせる。

「…うん」

「がんばってね」

グッと両手でグーを作った咲希が応援してくれる。

今日の放課後、渡すって決めた。

受け取って、もらえるかな。
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