恋の♡魔法のチョコレート
いつもはノックなんてしないで、すぐドアを開けちゃうんだけど。

今日は丁寧に2回コンコンってドアを叩いた。

はい、って琴ちゃん先生の声が聞こえる。

「失礼しまぁー…」

うるさく鳴る心臓の音、聞こえないフリをしてドアを開ける。

最初に目に入ったのは琴ちゃん先生、にこって笑ってどうしたの?って微笑みかける。


でもその後にね、小鳩の姿が見えたの。


そしたら保健室に入ることもできなくなちゃって。


手には可愛い手提げ袋を持ってたから。


あぁ、そっかそうなんだって。

やっぱり私には無理なんだって。

小鳩の持つチョコレートを見て思ったの。


「…っ」

走って逃げちゃった。

ドアも開けれないまま。

ぎゅって持っていた紙袋を抱きしめて。



見られたかな?

私の顔。

見てたかな。

そんなの気付かなかったかな…






「柳澤さん…っ!」


「っ!」




グッと腕を引っ張られた。



無我夢中でその場から離れようとした私の腕を、追いかけてきた小鳩に掴まれた。

「…なんで泣いてるんですか?」

「………。」

えっと、ここはちょっといいシーンなんじゃないかなって自分でも思ったんだけど。

正直言うと振り返った瞬間、小鳩の顔見て嬉しく思っちゃった自分もいるし。


でも目の前の小鳩は…


なんでそんなキョトンとしてるの?


「どうかしました?」

通常運転過ぎるよ。

でもそうなんでしょ、そーゆうことなんでしょ。

どうしよう涙の止め方がわからない。

腕を振り払って、持っていた紙袋を小鳩の胸に押し付けた。


力を込めて。



「小鳩が好き」



涙で前が見えないけど、見上げる覚悟もないんだけど、こんなチョコレートの渡し方しかできないんだけど。


「好きです、受け取ってください」
< 155 / 159 >

この作品をシェア

pagetop