恋の♡魔法のチョコレート
時間の余ったお昼休み、咲希も光介くんのとこから戻って来ないし、トイレにでも行こうかなって教室を出た。

ん-っと背を伸ばし、お腹いっぱいで眠くなりそうな体を起こして。

まだ5限目まで結構あるし、なんか飲み物でも買いに下の自販まで行こうかな~

自販機まで行こうと思うと1階まで行かなきゃいけないのはちょっとめんどうなんだけど、たまーにいいことがあったりして。

「あ…」

ボソッと声が出ちゃった。

これはちょっと嬉しくて思わず。

同じように自販機に飲み物を買いに来てたオージ先輩がいた。

ここからだと何買ったかわからないなぁ、何飲むのかな…

自販機から飲み物を取り出したオージ先輩がこっちに向かってくる。

友達と楽しそうに話しながら、私の方に。

「……っ」

すれ違うだけで何もないんだけど。

ただ隣をすーっとすれ違うだけ、それだけ。

この一瞬がすごく嬉しくて、ドキドキして、好きって思って。

たったこれだけのことなのに胸がいっぱいになる。

でもね…

振り返ってオージ先輩の背中を見つめた。

これじゃダメなこともわかってるんだけどなぁ。

なんにもできない私じゃあ、何も進めないこと。

「…バカみたいなことしてるなとは思ってるんだけど」

それでも一歩踏み出す勇気はなかなか出ないんだ。

遠くなっていくオージ先輩の姿を見て、タメ息しかでないなんて。

その一歩を踏み出したくて信じちゃってるんだよね、小鳩が作るあの…

「魔法のチョコレート手に入れたんだけど!」

「!?」

どこからか聞こえた声に思わず反応してしまった。

え、何!?今なんて言った!?

「えー、嘘!本物!?あの例のやつ?」

「そう!小鳩結都が作ったチョコレート!」

えーーーーーーーっ!!!

リアルに作ってもらえた人いるのーーー!?

その話には全面的に食いついて耳をダンボにして聞き入った。
自販機からちょっと離れたベンチでキャッキャ話してる女の子たち、上履きの色を見る限り先輩みたい。

「手に入れた人初めて見たよ!」

「私も手に入ると思ってなかったよ!」

私も初めて見たし、羨ましすぎる…!

だってあの小鳩だよ!?

作ってくれたなんてどんなトリック使ったの!?

「これで…告白がんばれる」

………。

「今日告おうと思うんだ」

…みんな一緒かもしれないな。

あと少し勇気が足りないの。

そのキッカケがもらえたら、がんばれる気がするんだよね。

「絶対上手くいくよ!だって魔法のチョコレートだもん!」

「うん、ありがとうっ」

そんな効果もあるんだよ、小鳩のチョコレートは。

みんなが勝手にそう思ってるだけだけど。
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