恋の♡魔法のチョコレート
「お願いっ、どうしてもチョコレートが欲しいの!私のために作ってください…!!」

恥を忍んでまぁ軽く?土下座なんてしてみた。人生初めての土下座は思ったよりすんなり頭が地面についた。ここが学校の廊下だってこと全然気にならないから。

「…誰ですか?」

下げた頭の上から聞こえた不審がる声に慌てて顔を上げ、忘れていた自己紹介を改めてした。

「1年3組柳澤詩乃(やぎさわしの)!」

パチッと目が合った。

すごい嫌そうな顔してた。

「嫌です」

めっちゃ食い気味に、まだ私が名前を言い終える前に、チッと舌打ちと共に聞こえた。

「えぇぇっ、待ってよ!まだ話終わってない!」

スタスタと歩き出した背中を追いかけるために立ち上がる。

背が高くて足の長い彼は歩くのも早い。

駆け足で追いかけて、背中のシャツを引っ張った。

「お願いっ、チョコレート…作ってもらえない!?」

うっとしそうに振り返る、めっちゃ睨まれてる。

「魔法のチョコレート、どうしても欲しいの…!」

シャツを掴む手をブンッと思い切り振り払われた。

「…っ」

「そんなチョコレート知りませんけど」

冷静な落ち着いた声がより冷血に思えた。

「どうぞ、お引き取りください」

迫力ある目力でドンッと釘を刺され、振り払われた手も所在が迷子のままその場に取り残された。

どんどん姿が小さくなっていく。

いや、歩くの早すぎでしょ。

「………。」


“そんなチョコレート知りませんけど”


「どんなチョコレートか聞かないってことは、それがどんなものか知ってるってことじゃん」

私は知ってるんだから、そんなチョコレートがあるって。

小鳩結都しか作れない魔法のチョコレートがあるって。

今一番欲しいものだよ。

「…諦めないもん」

絶対、何としてでも、作ってもらうんだ。

恋が叶う魔法のチョコレートを…!
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