恋の♡魔法のチョコレート
スカートのポケットに手を入れ、スッと例のものを取り出して小鳩の前に出した。

「マドレーヌ食べる?」

「は?」

昨日そらぴょんに教えてもらったマドレーヌ、潰れないように気を付けながら持って来た。

「これめっちゃおいしいよ!」

食べてみてよと言わんばかりの表情で、はいっと渡した。相変わらず仏頂面で1ミリ足りとも口元は緩まないけど。

「知ってた?マドレーヌとフィナンシェの違いって形なんだって、貝殻の形してたらマドレーヌなんだよ!それってその時の気分によるよね、今日はマドレーヌにしたいから貝殻型使おうかなっ」

「厳密には材料も違いますよ」

「え?」

私の話を途中で止めるように小鳩が遮った。

「フィナンシェは卵白のみを使用しますがマドレーヌは全卵を使用しますから、もちろん味や触感も変わってきます」

…そーいえば言ってたかな?原料も違うって、そらぴょんが。ざっくり言えば形が違うって話だったような気もする。

「知らなかったんですか?」

「し、知ってたよ!」

なんでいちいち高圧的なんだろう、背が高いからより下に見られてる気がするんだよ。

「…、小鳩はチョコレート以外も好きなんだね」

「好きじゃないですよ」

お弁当や水筒を詰めたバッグを持って、小鳩が立ち上がった。置いてかれないようにすぐさま一緒に立ち上がった。 

「そうなの!?じゃあチョコレートが好きなんだ!」

「別にチョコレートも好きじゃないです」

何度もここへ来てるのがよくわかった、エアコンのスイッチもどこにあるのかちゃんと把握してて慣れた手つきで消していた。ついでに部屋の電気も消して、外に出ようとドアを開けた。

それよりも何よりも、今の発言にはちょっとびっくりして。

だってカカオから作っちゃうぐらいだし、あんなに饒舌には語ってたのに。
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