恋の♡魔法のチョコレート
今日の放課後はチョコレートフォンデュ、1日中わくわくしてた。

チョコレートフォンデュなんて家でしたことないし、しかもそれが学校で出来ちゃうのも楽しみだし、小鳩のためと言いながらほとんど自分がやりたいだけな感じだけど。

ホームルームが終わったらすぐに家庭科室に行こう!

もう待ちきれないなっ

日直の合図で立ち上がる、これが終わればその瞬間解放される。

そしたらすぐチョコ研に行こ!

…あ、でも小鳩より早く着いちゃうかもしれないか!

「詩乃、ちょっといい?」

リュックを背負って、すでに脳内はチョコレートフォンデュでいっぱいだった私に咲希が話しかけた。

「何?どうしたの?」

いつもと様子が違う。

てゆーかここ最近の咲希は元気がなくて、それも何が原因かわかってるんだけど、今日はそれ以上に元気がなかった。

「咲希…?」

下がった眉に全然笑いたくなさそうな笑顔。

「あ、詩乃忙しい?今日も笹原くんと…」

「大丈夫!何にもないから!」

そんな咲希のこと、ほっとけるわけなくて。

そらぴょんにはチョコレートフォンデュは明日にしてもらおうとLINEを送った。

これはチョコレートフォンデュより大切なことだから。

「咲希何かあったの?」

みんなが帰ったあとの教室、咲希の隣に並んで窓際の壁にもたれながら話を聞いた。

締め忘れた窓からひゅーっと風が吹いてくる。

「…今日ね、光介に一緒に帰ろうって言われたの。だから待っててほしいって」

「そうなんだ!…嬉しくないの?」

小さな声で、このまま話していたら咲希は泣いちゃうんじゃないかと思った。

「なんか…、嫌な予感しかしないんだよね。急に待ってなくていいって言われたり、お昼休み会いに行ってるのも…私が会いたいからなのかなって思うし…、だから…」

消え入りそうな声で、ゆっくり俯いた。

付き合っていても不安なことってあるんだね。

それは恋をする限り尽きない悩みなのかもしれない。

「咲希…」

「ごめんね、急にこんな話!」

すぐに顔を上げて、笑顔を作り直したのがわかった。

でも全然ぎこちなくて上手く笑えてない。

「咲希…、私の前ではそんな顔しないでよ」

「…っ」

何もできないけどね、私がどうかしてあげられることじゃないけどね。

ただ咲希の話を聞くことはできるし、一緒に泣くことだってできるよ。

「私も一緒に待ってるから!案外普通の話かもしれないし!」

「詩乃…、ありがとう」
< 32 / 159 >

この作品をシェア

pagetop