恋の♡魔法のチョコレート
もうきっとそらぴょんは帰ったと思う、帰っていいよって言ったからあたりまえなんだけど。

部活の終わる時間、小鳩ももう帰っちゃったかな…

下駄箱で咲希と別れて、そのまま帰ろうかと思ったけど気になって家庭科室まで来ちゃった。もしかしてまだいるかもしれないって…

「失礼しまぁーす」

ゆーっくりおそるおそるドアを開けた。
静かに、囁くような声で、少しでも気配を消すように。

「……?」

ドアを開けきってもいつもの鋭い視線は感じなくて、癖で期待しちゃってたのか何もない方が違和感だった。

そろっと家庭科室に入って、中の様子を確認する。

「………。」

隅っこの調理実習台の前にイスに座って小鳩が顔を伏せていた。

寝てる…のかな?

しーんと静かな家庭科室で、そっと近付いてみるとスヤスヤと寝息を立てていた。

こんな無防備に寝たりするんだ、それはちょっと意外だったかも。

じぃっと見てみたけど起きそうになくて、それより小鳩が伏せるその横に視線を奪われた。

「きれーい…」

思わず声が溢れ出たぐらい。

でもそんな言葉じゃ言い表せれないぐらい。

一口サイズの花の形をしたツヤツヤと光るチョコレートたちが一寸の狂いもなく整列して、まるでアートのようなチョコレートだった。

「…やっぱりすごいんだな、小鳩は」

売りものみたい、それだけじゃもったいない。

これは噂になるよ、これが魔法のチョコレートじゃなくても…

「盗みは犯罪ですよ」

チョコレートに夢中になりすぎて全く気付かなかった。背筋をシャンとした小鳩がいつもの視線で私を見ていることに。

「起きてたの!?てゆーか盗んでないし!」

「未遂でよかったですね」

「未遂でもないよ!盗むつもりもなかったから!」

すぐに立ち上がった小鳩はぱぱっとチョコレートたちを箱に詰め、目にも留まらぬ速さで片付けた。
本当に早いから、別に盗まないって言ってるのに。
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