恋の♡魔法のチョコレート
お互い帰るんだから行先はもちろん同じで、下駄箱目指して歩いた。
だって靴に替えないと帰れないし、だからそこまで隣を歩くのはなんら変なことじゃない…と思ってるのは私だけみたいで。

「露骨にそんな離れなくてもよくない?別に小鳩に何もしないよ?」

「今話しかけてますよね」

「話すのもダメなの!?」

さすが難攻不落(なんこうふらく)堅物(かたぶつ)、廊下の隅っこを歩いて私と最大の距離を保ってる。

私はバイキンかっ

心外過ぎて心の中でツッコんじゃうわ。

「あ、そうだ!小鳩はフルーツは好き?」

「…なんですか、それは」

「質問だけど、YesかNoか!」

「………。」

すぐに拒否権を発動されたから、そんなのお構いなしに話を続けた。

「明日チョコレートフォンデュしようよ!チョコ研の活動で!」

「いや、あなた部員じゃないですよね!?」

「部活見学って項目があるじゃん、うちの高校には」

「それは見学って…っ」

目を細くして、ん?という表情をした小鳩は何か心当たりがあったのか途中で話すのをやめた。私を見る目はどんどん細くなって、見えなくなるんじゃないかと思った。

「…フルーツ盛り合わせ」

重そうに口が開く。ボソッと呟いたその言葉には心当たりがある。

「冷蔵庫に入ってておかしいなと思ったんですよね。もしかしたら部長のかもと思ってそのままにしておきましたが、原因はあなたですか」

原因って、犯人ならまだしも原因て。

人を危険人物みたいに言わないでよ。

そうだけどね、そうなんだけどね。

朝こっそり昨日買った30円引きのフルーツ盛り合わせを家庭科室の冷蔵庫に入れさせてもらったの。だって傷んじゃったら嫌だし、小鳩が使ってたからチョコ研の材料ってことにしておけば許されるかと思って。

「見付かっちゃったなら話は早いんだけど、どう?チョコレートフォンデュ!」

「……。」

「チョコレートは嫌いでも、フルーツと組み合わせたらイケるかもしれないな~って!」

「…そこまでして欲しいんですか、チョコレート」

スッと小鳩が前を向いた。

私から見える横顔は髪にかかってどんな表情をしてるのかよくわからなかった。
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