恋の♡魔法のチョコレート
「…正直言ったら、欲しい!」

「…そんなっ」

「でもそれだけじゃないよ?」

もちろん、小鳩が作ったチョコレートを手に入れることが目的だった。

今でもそれは変わってない。

「小鳩と初めていっぱい喋った日ね、ほらカカオからチョコレート作ってた時!」

私の小鳩のイメージは人に関心がなくて、とにかく威圧感を放ってて、目付きが悪くて、誰とも話さない…最悪だけどそんなイメージだった。

だけど自分の好きなことについてひたすらに話す小鳩はわかりにくいけど楽しそうに見えた。

「一瞬笑ったでしょ?」

“奥が深いです”

ニッって、嬉しそうに。

「あの時思ったんだよね、その顔も悪くないなって」

もっと見たいと思った、笑った顔が。

「だって小鳩っていっつも1人だし、絶対友達いないし」

「余計なお世話です、いませんけど」

「それ見てね、もったいないなぁって思ったの!」

そんな顔できるならもっとすればいいのに。

「あの時の小鳩いい顔してたよ」

してみたら、いいのに。

「別に…、そんな顔した覚えはないです」

「え~、照れてる~?」

「照れてません!」

「みんなの前でもそうすればいいのに、もったいないよ!」

にこっと笑って見せたけど、小鳩は相変わらずでフンッと目を逸らされた。

チョコレート以外にはなかなか笑ってくれないんだね、手厳しい。

下駄箱に着いた。

上履きからスニーカーに履き替えて、小鳩に手を振った。

「じゃあ明日!チョコレートフォンデュ楽しみだね!」

「………。」

「小鳩っ、ばいばい!」

「…。」

「ばいばいっ!」

「~っ、さようならっ」

無理矢理のさようならだったけど、それでも言ってくれたことがなんだか嬉しくて。

ふふって笑っちゃった。

明日も、楽しくなったらいいな。
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