恋の♡魔法のチョコレート
「あっ」

だけど、すぐに窓の外が気になっちゃった。

ここは2階、下を覗けば中庭が見える。

部活の時間、この中庭でも練習してる人たちがいた。

「オージ先輩だ」

ダンス部の大地拓哉(おおちたくや)先輩。

大地がおおじにも読めるから、みんなにオージって呼ばれてる。

「見られてラッキーだね」
 
「…うんっ」

そっか、今日はここで練習してるんだ。
ダンス部の部活スケジュールってイマイチわからないから、どこで練習してるとか把握できないんだよね。

へぇ、今日はここで…

「詩乃、全然ページ変わってないよ」

「!」

視線が完全にチョコレートの歴史からオージ先輩だった。

てゆーかそこにオージ先輩がいたら、それはもうオージ先輩しか見られない。

明るくて、カッコよくて、背も高くて、ついでにおもしろくて。

憧れだよ、みんなの。

いつもで人が集まって来ちゃうの。

わぁー、バク転してる…

すごーい…♡

「チョコレートなんか調べるバイタリティあるならオージ先輩に告白すればいいのに」

頬杖を付きながら咲希がこっちを見てる。

酔いしれた世界から一気に現実に引き戻された。

そんなの言われなくてもわかってるけど。

「それが出来たらこんなことしてないよ。あんな人気な先輩、私に可能性なんてあると思う!?」

「………。」

「嘘でもあるよって言ってよ!」

一目惚れだった。

新入生歓迎会の部活紹介で踊るオージ先輩を見て、これ以上ないってくらいドキドキした。

今もずっとドキドキしてる。

だけど、今の私が近付ける距離はこの距離が精一杯で。

もっと近付きたいって思ってる、でもその勇気もない。

だからせめて魔法のチョコレートがあったら、少しでも勇気が出るんじゃないかって…そう思った。

自分に自信が持ちたくて、どうしても欲しいの…

小鳩結都の作る魔法のチョコレートが。
< 5 / 159 >

この作品をシェア

pagetop