恋の♡魔法のチョコレート
高校に入って初めての文化祭、チョコ研に入って初めてのイベント、それなりにテンションは上がってる。

それと、最近咲希が嬉しそうで。

「今週光介くんの試合見に行くんだ?」

「うん、練習試合だけどね。来てほしいって言われたから」

「いいなぁ、甘々~♡」

少し照れながら笑う咲希から感じるしあわせオーラからもう何を聞かなくてもよさそうだった。

「詩乃のおかげだよ、ありがとう」

「ううん!そんなことないよ、咲希ががんばったからだよ!」

うまくいってよかった、もう一度気持ちを伝えることができて…

やっぱり魔法のチョコレートはすごいんだよ、なんてね。

何気なく教室の窓から外を眺め、ほわほわした気分で空を見ていた。

「詩乃は?もうすぐ文化祭で忙しくなるんでしょ?」

「うん、まだ何するかわかんないんだけどね。何するのかなー、何作るんだろう?気になるよね!」

何するか話合おう!って森中部長が言ってたから、私たちも案を出していいのかな。
そしたらどうしようかな、何がしたいかな。

「チョコ研だからやっぱチョコレートを使ったお菓子の販売だよね、何がいいかな…」

ふわふわ浮かぶ雲を見ながら、チョコレート味のわたあめって作れないのかなって考えてた。でも色合い的に映えないかってすぐに断念したけど。

そんなことをぼぉーっと考える私の方を見て咲希が何気なく言い放った。

「チョコレートでいいんじゃないの?」

「…え?」

「だって小鳩くんが作るんでしょ?てことはそれって魔法のチョコレート、になるじゃないの?」

………。

一瞬フリーズしたまま咲希の目を見てた。

理解するのに少しだけ時間かかっちゃって。

「…っ、本当だっ!!!」

気付かなかった!確かにそうだ!!

めちゃくちゃ職権乱用だけど、どこよりも簡単に手に入る方法だ!!!

「咲希頭いいっ!」

「普通に考えればそうじゃない?チョコレート研究会なんだから、作るよねチョコレート」

文化祭に気を取られ過ぎて忘れちゃってた。

そっか、そうだ、まだ私にチャンスはあるかもしれないんだ…!

「やばい、やる気出て来たかも…」

これならスムーズに小鳩にチョコレートを作ってもらえるかもしれない。

「今度こそ、詩乃の番だよ」

咲希がにこっと笑った。

その笑顔に勇気づけられる。

「うん…っ、もう一度私もがんばる」

次は必ず、ちゃんと告えるように。

改めて告白しよう、オージ先輩に。

「詩乃に魔法のチョコレートもらって、本当なのかなって私も思っちゃった」

「でしょでしょ、小鳩のチョコレートはすごいんだよ!」

「うん、でも…その魔法のチョコレートの噂ってどこから始まったんだろうね?」

ふとした咲希の疑問だったけど、それは私も明確に答えを持っていなくて“ねっ”としか相槌を打てなかった。

あんまり考えたことなかったなぁ、噂の始まりなんて…
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