恋の♡魔法のチョコレート
「利用出来るものはすればいいんじゃないですか」

「え?」

「実際、部費が少ないのは事実ですから。お金がなくては活動もままなりません」

「それは…、そうだけど」

「部長がそうゆう面で動いてくれてるんです。少ない部費でやりくりして、先生に掛け合ってくれたり、文化祭の出店場所など細かい業務をしてくださってるんです」

そう話す小鳩はいつもより優しい顔をしている気がした。

「そのおかげで僕は自由に活動させてもらってますから」

私なんかより森中部長の方が小鳩のことをよくわかってるのかな。

「あの人、お菓子作れませんからね。でも好きなんですって、この場所が」

小鳩も同じようにそう思ってるのかもしれない、森中部長のこと。

へぇ、そっか。

なんか…

なんだろ、ちょっとだけ胸がきゅっとなった。

小鳩のこと私が1番知ってるくらいに思っちゃってた。

「柳澤さん」

「……。」

「柳澤さん?」

「あ、え…っ」

名前を呼ばれてることに気付かず慌てて顔を上げた。

その瞬間、何かが口の中に入って来た。

パクッて思わず食べてしまった。

「…!」

「どうですか?魔法のチョコレートの味は」

ふっと息を漏らすように微笑んだ。

「…っ」

小鳩が丁寧にアルミを剥がしていたチョコレートが放り込まれ、私の舌の上で溶けていく。

なめらかで柔らかいくちどけに、ふわっと香るカカオと程よく食感をくれるナッツ。

「…おいしい、めちゃくちゃおいしいっ!!」

これが小鳩が作ったチョコレートなんだ。

「それならよかったです」

また笑った。

もっとみんなに見せればいいのにって思ってたけど、何でかな。

あんまり見せられたら困っちゃう。

口の中のチョコレートはあっという間に溶けてなくなった。
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