恋の♡魔法のチョコレート
「へぇ、柳澤さん好きな人がいたのね」

「内緒だよ、内緒!琴ちゃん先生だから教えるんだからね♡」

私の熱烈な土下座が小鳩の心を動かしたのかお菓子作りを教えてもらえることになった。

簡単なのにおいしくてお菓子作りが得意っぽく見えるようなレシピを、そんなのないですってあしらわれたけど。

「それでその人ためにお菓子作ってるのね」

「へへ~っ、全然上手くできないんだけどね」

まだオージ先輩には伝えてない、小鳩に教えてもらったら言おうと思って。

今そのお勉強中、完璧にマスターできるまで。

「そうねぇ、火傷してるようじゃあまだまだね」

「痛っ」

琴ちゃん先生が保冷剤をくるんだタオルを左人差し指に当てた。

「水ぶくれになってるじゃない、気を付けなよ女の子なんだから」

「~っ、だってお菓子作るとかしたことないんだもんっ」

「柳澤さん、チョコ研なんでしょ?作るでしょ、チョコレート」

それは、確かに。

ただ作ってるのはほぼ小鳩。

てゆーか不純な動機でチョコ研に入ったんだ、そりゃ火傷だってするのも当然かも。

さっそく家庭科室から保健室に来てる私なんだから。

琴ちゃん先生から保冷剤を受け取り、自分でも火傷の跡を確認した。

残ったりするのかな…

「これぐらいならきっと大丈夫、すぐに手当てすれば問題ないよ」

白衣を腕まくりした琴ちゃん先生がにこっと笑った。

「いいねぇ、青春ぽくて!好きな人のためにがんばるっていいと思うよ!」

くるくると回る丸イスに座る私の前で、デスクの上にあるパソコンを叩き出した。

きっと私のあれこれ書いて提出しなきゃいけないんだと思う、保健の先生も大変だよね。

「ねぇねぇ、琴ちゃん先生!」

大変だよねって言いながら、邪魔するのはよくないんだけどさっきの笑った顔を見たら聞きたくなった。

「先生って彼氏いるの?」

答えはなんとなくわかっていたけど。

「うん、いるよ」

「わー、やっぱり!」

しあわせな人の顔ってわかっちゃうよね。

「もうすぐ結婚するの」
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