恋の♡魔法のチョコレート
午後になれば次は部活の当番、駆け足でチョコ研の模擬店のある多目的ホールへ向かった。

そらぴょんもう来てるかな?
もっと急いだ方がいいかな?
まだ、大丈夫か…

少し足を止めて、ゆっくりと歩いた。

ぐるぐると頭を駆け巡ることを考えながら。

なんか長かったような短かったような時間だったな、オージ先輩といるの。

楽しかったんだけどな。

それは本当に、そう思ってた。

だって私はオージ先輩のことが好きなんだもん。

告白したいぐらい好きだったんだもん。

ずっとずっと見て来たのに。

なのに、どうして気持ちが重くてしょーがないの…?

「メリー!待ってたよ!!」

多目的ホールに着くとすぐに私を見付けたそらぴょんが叫んだ。

まぁまぁ大声で、その声から必死感が伝わる。

てゆーか私も二度見してしまった。

チョコ研の模擬店に並ぶ鬼のような列に。

「早くメリー!手伝って!!」

「う、うんっ」

慌ててお店の側に回ると森中部長もまだ当番をしていた。あまりの盛り上がりっぷりに午後から交代もできないでいるっぽかった。

「柳澤ちゃん!その袋取ってくれる!?」

「あ、はい!これですか!」

チョコ研、想像以上に人気エグい…

列で来てるだろうな~ぐらいには思ってたけど、こんなてんやわんやしてるとは思わなかった。のんびりしてる場合じゃなかったかもしれない。

白沼(しらぬま)先生!それ商品違います!」

「え、わ、そうなの?どれなの?」

「こっちですよ!私やりますからこれお願いします!」

いつもはいない顧問の白沼先生も駆り出されていた。

若い男の先生、ひょろっとしてなんだか頼りない。

森中部長に注意されて萎縮しちゃってるし。

それぐらいバタバタしてるのに見当たらなかった。

キョロキョロと周りを見渡しても、どこにも。

「森中部長っ、小鳩は…?」

「あ、小鳩くんね!急遽クッキー追加してもらってるの、今家庭科室!」

お客さんに対応しながら教えてくれた。

そっか、なるほど、想像以上の売り上げに在庫が足りなくなったんだ。

昨日たくさん焼いたんだけど。

みんなでラッピングしてこれだけあれば十分!ってぐらいあったと思うけど、それを上回ってるなんてすごい。
こっからだと最後尾見えないし、それはやっぱシンプルに嬉しい。

「メリーっ、ぼーっとしてないでこっち手伝って!」

「あ、ごめん!わかった!」
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