恋の♡魔法のチョコレート
小鳩からもらったチョコレートを両手で持ち、じっと見つめながら廊下を歩いた。

ずっとずっとずっと欲しかった。

手に入れるためになんだってするんだって思ってた。

いつかそんな日が来た時には、オージ先輩に気持ちを伝えようって。

これがあれば勇気をもらえる気がしたから。

そんな力があるって、このチョコレートには。

「やっとここに…」

気を利かせた小鳩は先に1人で多目的ホールへ行ってしまった。

そんなこともできるんだ、そんなことしないと思ってたのに。

だってチョコレートにしか興味ないじゃん。

興味ないはずなのに…


“だからそれは柳澤さんのためのチョコレートです”


そんな優しいとこ、急に見せないでよ。

ずしりと重たいチョコレート。

これはチョコレートの重さなのか、私の気持ちなのか、それとも。

ぎゅっと魔法のチョコレートを抱きしめるように抱えた。


今の私がすることはひとつ。

こんなチャンスもうないよ。

やっと掴んだチャンスだよ。


告わなきゃ…、オージ先輩に気持ちを伝えなきゃ。


そうだよね?


会いに行かなきゃだよね、会いに。

なぜだか足が重くて全然進まない。

どうして。


オージ先輩のところに…!


ブブッ、とスカートのポケットに入ったスマホが鳴った。

LINEかな、誰だろ。

“詩乃ちゃん今どこにいる?”

私が今会いに行かなきゃいけない相手だった。

“中庭のベンチのとこにいるんだけど、来れない?”

「………。」

背中押してもらえたよね。

そうだよ、今ならきっと大丈夫。

深呼吸をした。

うん、とゆっくり頷いて。

抱きしめた魔法のチョコレートを持って中庭まで走った。
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