恋の♡魔法のチョコレート
「そんな軽い気持ちだったのかなっていう自分にもビックリなんだけど」

はぁっと息を吐きながら頬杖を付いた。

自分の意思の薄さにゲンナリしちゃう。

嫌だな、なんか。

どんだけフッ軽なの。

心変わり早すぎ。

「そうかな?私はそうは思わないけど」

「え…?」

「オージ先輩のことが好きだった詩乃だって本当だと思うよ、でもそれ以上に好きな人が現れちゃったってことでしょ?」

「好きな人って…言われると恥ずかしいんだけど」

「だって詩乃は最初から小鳩くんに近付きたくて必死だったよ」

「…私が?」

「うん」

私が近付きたいのはオージ先輩だった…
と思うんだけど。

「小鳩くんと話すためにチョコレートトーク仕入れたり」

「それは魔法のチョコレートが欲しくて」

「小鳩くんとキッカケ作るためにフィナンシェ買ってきたり」

「それも魔法のチョコレートが欲しくて」

「小鳩くんに会いに保健室まで行ってたじゃん」

「だから、それも…っ」

「全部小鳩くんじゃない?」

小鳩のためっていうか…

小鳩が作る魔法のチョコレートが欲しかっただけなんだけど。

どんな手を使ってでも手に入れてやろうっていろんなこと考えて小鳩に近付いてた。

だからそれが別にそーゆう意味じゃなくて…

「小鳩くんのこと知ろうとしてたよ」

そんなつもりは全然なかったんだけどな。

「知っていくうちに好きになるってよくあることじゃん」

じゃあいつからそうだったのかな。

「オージ先輩の時は見てるだけだったけど、今の詩乃の方が私は納得できるよ」

「…オージ先輩の時はキャーキャー騒いでるだけって思われてた?」

「そんなこともないけど、好きのカタチは人それぞれだし。でも今の方が、恋してるって顔してる」

微笑む咲希の前髪が風で揺れてる。

そんなセリフ、いざ聞いたらぽっと頬が熱くなる。

「さすが…、彼氏持ちは言うことが違いますね」

「まぁね!詩乃よりは経験あるからね!」

「知ってるしー!私なんかひよっこだし!」

「嘘嘘、みんな恋したら悩むことばっかなんだよ」

ずっと悩んでる気でいたけど、思えばずっと私は楽しかった。

オージ先輩に近付きたいって言いながら本当は遠くから見てるだけで満足してたのかもしれない。

告白したいって思いながら、オージ先輩を知ろうとする努力なんてしてたかな。

「今日チョコ研打ち上げなんでしょ?早く行きなよ」

「うん…、行ってくる!」
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