結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「今日、仕事のあとに時間ある? 三十分くらいでちょいちょいっとやっちゃおうか」

言葉を被せるようにたたみかけられ、私は「今日ですか?」と驚きの声を漏らした。

「娘のお迎えもありますから――」

「じゃあ、お迎えしたあと菫花ちゃん家でやればいいじゃない。七時頃に家に行くよ」

「で、ですが……」

いくら気心の知れているオーナーとはいえ、他人を、しかも男性を家の中に入れるのは気が引ける。

「うち、散らかってますし。娘がすごく騒がしいですから」

「子どものいる家は散らかってるもんだよ。うちの姉貴ん家も同じだから、大丈夫大丈夫」

ばんばんと肩を叩かれ、丸め込まれてしまった。

オーナーはいい人だけれど、たまに強引で困ってしまう。

ブログを初めるときもそうだった。私には無理ですと言ったのだけれど、大丈夫大丈夫と言いくるめられてしまったのだ。

結果、大事な副収入となっているから、感謝しかないのだが。無償で時間を取らせてしまって、申し訳ない気持ちは拭えない。

――世の中には優しい人がいるものね。見返りも求めず、親切にしてくれるなんて。

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