結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
私がシングルマザーだから、少しでも力になれればと思ってくれているのだろう。

――今回もご厄介になろうかしら。

感謝の気持ちをかみしめながら、私は今日一日、勤務を終えた。



杏花を連れて帰宅し、夕食の下ごしらえをしていると、玄関のチャイムが鳴った。

時計を見るともう夜の七時。オーナーが来てくれたようだ。

「はーい」

私が玄関のドアを開けると、オーナーが「こんばんはー」と軽快な声をあげた。

杏花は突然やってきた知らない男の人を前に、ぽかんと口を開ける。

「杏花。この人はね、ママのお仕事の先生よ」

私は杏花にもわかるように紹介する。『上司』や『オーナー』と言われてもぴんとこないだろうから、一番わかりやすい『先生』という呼び方を使った。

「こんばんは。お名前はー?」

「……ももか」

「ももかちゃんかあ、よろしくなー」

オーナーは杏花の頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でまわす。杏花はイヤイヤこそしなかったものの、ちょっぴり迷惑そうだ。

それにしても、オーナーにまで『パパ』と呼んだりしなくて安心した。

「すみません、狭くて汚いんですが……」

「ほんとにワンルームなんだね……」

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