結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
部屋の中をまじまじと観察されて、なんだか恥ずかしい。

オーナーは棚の上にあったうさ耳カチューシャとリスの帽子が目に入ったようで「これは?」と尋ねてくる。

「ああ。それは昨日、杏花と一緒に遊園地に行ったときに」

「そっか、遊園地か! そりゃよかったなー」

杏花に向けて笑いかけるオーナー。すかさず杏花が「パパもー!」と声をあげた。

「……パパ?」

オーナーの表情が引きつる。

いったいなんと説明したらいいだろう、私は心の中でどうしようと悲鳴を上げた。

「ええと……杏花の父親代わりをしてくれる人がいる、と言いますか……」

もごもごしていると、オーナーは杏花に目線を向けたまま、静かに尋ねてきた。

「それって、この前、店に来てた男?」

聞いたこともない声色に、すっと背筋が凍る。

嘘をつく必要もない気がして、私は素直に「……はい」と答えた。

「へえ。番号交換してると思ったら、やっぱりそういうことだったんだ」

ゆらりと体を揺らし、オーナーが顔を上げる。暗く陰った目、陰湿に歪む口もと、普段の明るくてひょうきんな彼じゃない。

「オーナー……?」

どことなく恐怖を感じ、私は息を呑んだ。

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