結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
「ねぇ、菫花ちゃん……これまで俺、さんざん面倒見てあげたよね?」

地を這うような声で尋ねられ、私は「え……」と掠れた声を漏らす。

「これだけ尽くしてやってんのに、なんで横からぽっと出てきた男にかっさらわれなきゃなんねえんだよ」

粗雑な言葉に危うさを感じ、私は杏花のもとに駆け寄り、小さな体をぎゅっと抱きしめた。

面倒を見てもらったことは事実で、とても感謝している。

けれど、かっさらうってどういうこと? そもそも私は、誰の所有物でもないのに。

「思わせぶりににこにこしやがって。そうやって男を使っては捨ててんだろ」

「そんな、私は……」

「結局は顔かあ? あの男の見た目が好みだったのかよ」

一歩、また一歩とにじり寄ってくるオーナーに、私は杏花とともにうしろへ下がった。

しかし、狭苦しいワンルームに逃げ場などなく、すぐに背中が壁に当たってしまう。

「礼をもらわなきゃ、気が済まねぇなあ」

「お、お礼、ですか……?」

「わかるだろ? これまでたっぷり世話してやった分、サービスしてもらわねーと」

ぞっと全身が粟立つ。オーナーの親切は、私への気遣いではなかったの?

見返りを求めている……?

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