結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
オーナーが杏花の腕を掴み引っ張る。揺さぶられた杏花は驚き、びええんと声をあげて泣き出した。

神経質に歪む彼の表情。乱暴されるのを恐れ、私は杏花を奪い返すと、覆い隠すように抱きすくめた。

「杏花に触らないでください!」

「ガキんちょには、どっか行っててもらうか。つっても、狭すぎて閉じ込める場所もねえな」

怖ろしいことを言って舌打ちすると、私を杏花から引き剥がし、再び杏花の腕を掴んだ。

「やめて!」

「うるせぇなあ。殺しゃしねえよ」

小さな体を引きずって玄関に向かうと、ドアを開け外に放り出した。

「杏花ぁ!」

「ママぁー!」

こちらを見つめて立ち尽くす杏花を無視して、オーナーは無情にもドアを閉め鍵をかける。

私がドアに駆け寄ろうとすると、両肩を掴まれ、部屋の奥に引きずり戻された。

「杏――」

口を塞がれ、杏花を呼ぶ声がかき消える。オーナーは暴れる私を畳の上に押し倒すと、常軌を逸した目をして覆い被さってきた。

「真冬じゃねえんだから、多少外に置いといたって死なねえよ」

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