結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
『なら、決めてくれ。赤か黒、どちらに賭ける?』
ディーラーがルーレットにボールを回し入れる。残された時間は長くない。男性は眼差しで私を急かす。
『じゃあ……赤で』
『このチップを、すべて赤に』
彼の宣言と同時に、ディーラーがタイムアップのベルを鳴らした。
ボールは速度を落とし、カラカラと音を立てながら数字のポケットに吸い込まれる。
落ちた場所は――0。赤も黒も属さない場所だ。
「うそ……」
当たったのは――眼鏡の紳士。自身の前に積み上がったチップを見て、彼は「Yes……!」と歓喜した。
冷静になって、すうっと背筋が冷えた。外してしまった申し訳なさと、気づかないうちに熱くなっていた自分に。
――私、いったいいくらつぎ込もうとしてた……?
『残念だ。終わりにしよう』
彼が肩をすくめ席を立った。くいっと指先で招かれ、困惑するまま彼のあとについてカジノを出る。
デッキに出ると、涼やかな夜風が吹き抜けていった。三月の夜の海、温暖な地中海とはいえ、少し冷える。
すかさず彼が上着を脱ぎ、私の肩にかけてくれた。エスコートに慣れた人だ。
ディーラーがルーレットにボールを回し入れる。残された時間は長くない。男性は眼差しで私を急かす。
『じゃあ……赤で』
『このチップを、すべて赤に』
彼の宣言と同時に、ディーラーがタイムアップのベルを鳴らした。
ボールは速度を落とし、カラカラと音を立てながら数字のポケットに吸い込まれる。
落ちた場所は――0。赤も黒も属さない場所だ。
「うそ……」
当たったのは――眼鏡の紳士。自身の前に積み上がったチップを見て、彼は「Yes……!」と歓喜した。
冷静になって、すうっと背筋が冷えた。外してしまった申し訳なさと、気づかないうちに熱くなっていた自分に。
――私、いったいいくらつぎ込もうとしてた……?
『残念だ。終わりにしよう』
彼が肩をすくめ席を立った。くいっと指先で招かれ、困惑するまま彼のあとについてカジノを出る。
デッキに出ると、涼やかな夜風が吹き抜けていった。三月の夜の海、温暖な地中海とはいえ、少し冷える。
すかさず彼が上着を脱ぎ、私の肩にかけてくれた。エスコートに慣れた人だ。