結ばれてはいけない御曹司に一途な想いを貫かれ、秘密のベビーごと溺愛されています
自然な仕草で私の手を引き、手すりの近くまで誘導すると、にっこりと微笑んだ。

「日本語、通じる?」

「え、ええ。でも、どうして私が日本人だとわかったんですか?」

「たまに日本語が出ていたから。『やった』とか『うそ』とか」

恥ずかしくなって額に手を当てる。興奮すると日本語が混じってしまうのだ。

「あの、それより、どうしてあんなことを?」

私のせいで、彼は結構なお金を失ってしまった。尋ねてみると、彼は気にしていないとでもいったふうに、くすくす笑った。

「カモにされていたのに、気づいていないようだったから」

「か、カモ!?」

思いもしなかったことを指摘され、驚きに声を跳ね上げる。

「……冷静さを欠いていたのは認めますけれど、カモだなんて大げさです。そもそもギャンブルは運なのですから、そう都合よくは――」

「運じゃない。ディーラーはボールの落とす位置を自由に変えられる」

「そんなのできっこありません」

「できるんだよ。それがプロのディーラーだ」

まさか、と目を丸くする。

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